スプレッドシート タイムライン活用術!GASで生産工程表を自動化

皆さんの工場では、生産工程をどのように管理していますか?
「ホワイトボードに手書きだけど、変更があるたびに書き直すのが大変…」
「担当者が作ったExcelのガントチャート、いつの間にか更新が止まってる…」
そんな「あるある」な悩みを抱えているなら、今回ご紹介するGoogleスプレッドシートの『タイムラインビュー』が、あなたの救世主になるかもしれません。
この記事を読めば、まるで生き物のように自動で進捗状況を教えてくれる生産工程表が、プログラミング経験ゼロでも作れるようになります。面倒な管理業務から解放されて、本来の「ものづくり」にもっと集中しませんか?
そもそもタイムラインビューって何?Excelのガントチャートと違うの?
タイムラインビューは、スプレッドシートのデータを元に、いつ・誰が・何を・いつまでに行うかを、時間軸に沿ってカード形式で表示してくれる機能です。

よく使われるExcelのガントチャートと似ていますが、大きな違いはその手軽さと共同編集のしやすさにあります。
- Excelガントチャートの悩み:
- 設定が複雑で、作るのが面倒
- ファイルのバージョンが複数できてしまい、どれが最新かわからなくなる
- 担当者しか更新できず、リアルタイム性に欠ける
- スプレッドシート タイムラインビューの強み:
- たった数クリックで、表データから自動でタイムラインを生成
- クラウド上で全員が同時に最新情報を閲覧・編集できる
- カードの色や表示項目を直感的にカスタマイズできる
これまでExcelで苦労していた工程管理が、驚くほどシンプルで快適になるんです。
【実践】たった3ステップ!生産工程表をタイムラインビューで作ってみよう
百聞は一見に如かず。さっそく、簡単な生産工程表をタイムラインビューで作ってみましょう。PCが苦手な方でも大丈夫、一緒にやっていきましょう!
ステップ1:まずは基本のデータを入力しよう
最初に、タイムラインの元になるデータを用意します。今回は、以下のような項目で簡単な表を作成しました。

ポイントは「開始日」と「終了日」を必ず入れること。 これがタイムラインの長さを決める重要なデータになります。
ステップ2:タイムラインビューを挿入する
データが準備できたら、いよいよタイムラインビューを挿入します。


データ範囲を確認するウィンドウが表示されるので、先ほど作成した表の範囲(例: A1:F7
)が正しく選択されていることを確認して「OK」をクリックします。


たったこれだけで、スプレッドシートに新しい「タイムライン」シートが追加され、工程表が視覚的に表示されます。あっけないほど簡単ですよね!
ステップ3:カードの色や表示項目をカスタマイズ
今のままだと、すべてのカードが同じ色で少し見づらいですね。そこで、右側に表示される「設定」パネルを使って、もっと分かりやすくカスタマイズしていきましょう。

- カードの色: 「カードの色分け」の項目を「製品名」にしてみましょう。すると、製品ごとにカードが色分けされ、どの製品の工程かが一目でわかるようになります。
- 必須項目:
- カードのタイトル: 「工程」列を選びましょう。カードに工程名が表示されます。
- 開始日 / 終了日: それぞれ「開始日」列、「終了日」列が自動で設定されているはずです。
- オプションの詳細:
- カードの詳細: 「担当者」列を選べば、誰のタスクかが明確になります。
- カードのグループ: 「製品名」でグループ化すると、製品ごとに行がまとまり、さらに見やすくなります。


例えば任意の項目のカードの色を「製品名」にして、表内の製品名に着色しておくと・・・

タイムラインにも同じ色が付き非常に見やすくなります。
これで、誰が見ても分かりやすい生産工程表の基本形が完成しました!
【応用】GASでタイムラインを自動更新!進捗状況をリアルタイムに
基本機能だけでも十分便利ですが、ここからがWorkstyle Hackerの真骨頂。GAS(Google Apps Script)という魔法を使って、この工程表に命を吹き込みます。
目指すのは、「進捗」列を「完了」に変えたら、タイムラインカードの色が自動的にパッと変わる仕組みです。
GASって何?Geminiに聞けば怖くない!
「GASとかプログラミングとか、急に難しそう…」と思ったあなた、安心してください。今は私たちにはGeminiという強力な味方がいます。
GASは、Google Workspaceの様々なアプリを自動化できるプログラミング言語ですが、専門家でなくても大丈夫。やりたいことを日本語でお願いすれば、Geminiがコードを書いてくれるんです。今回は、その「コピペでOK」なコードをご用意しました。
コピペでOK!進捗に合わせてカードの色を自動で変えるGASコード
では、早速実装していきましょう。

- スプレッドシートのメニューバーから「拡張機能」→「Apps Script」を選択します。
- 新しいエディタ画面が開いたら、最初から書かれているコード(
function myFunction() { ... }
)をすべて削除します。
そして、以下のコードをそのままコピーして貼り付けてください。
// スプレッドシートが編集されたときに実行される関数
function onEdit(e) {
// 編集されたシートやセルの情報を取得
const sheet = e.source.getActiveSheet();
const range = e.range;
// 編集されたのが「シート1」のF列(6列目)の場合のみ処理を実行
if (sheet.getName() === 'シート1' && range.getColumn() === 6) {
// 「タイムライン」という名前のシートの存在を確認
const timelineSheet = e.source.getSheetByName('タイムライン');
if (!timelineSheet) return; // なければ処理を終了
// データ範囲を取得
const dataRange = sheet.getDataRange();
const values = dataRange.getValues();
// 各行の進捗をチェックして行の色を変更(ヘッダーを除く)
for (let i = 1; i < values.length; i++) {
const row = i + 1;
const progress = values[i][5]; // F列の進捗状況
let color = '#ffffff'; // デフォルトは白
if (progress === '完了') {
color = '#d9ead3'; // 薄い緑色
} else if (progress === '作業中') {
color = '#fff2cc'; // 薄い黄色
}
// 行の背景色を設定
sheet.getRange(row, 1, 1, sheet.getLastColumn()).setBackground(color);
}
}
}
現在、GASから直接タイムラインビューのカードの色を操作する機能は提供されていません。しかし、ご安心ください!今回は、データシート側の行の色を進捗状況に合わせて変えることで、タイムライン上でもどのタスクが完了したか視覚的に判断しやすくする代替案をコードに組み込みました。今後のアップデートに期待しましょう!

- コードを貼り付けたら、フロッピーディスクのアイコン(プロジェクトを保存)をクリックします。
これだけで準備は完了です!

動作を確認してみよう!
さあ、スプレッドシートに戻って、「B部品」の「検査」の「進捗」列を「完了」から「作業中」に変えてみてください。

どうでしょう?データシートの行の色がさっと変わりましたよね? このように、進捗を更新するだけで自動的に色がつくので、どのタスクが終わったのか、遅れているのかが一目瞭然になります。
【注意】うまく動作しない場合は?
同じように設定してもうまく動作しない場合は以下を確認してみましょう。
1. F列に入力した文字は「完了」や「作業中」と完全に一致していますか?
これが最もよくある原因の一つです。セルをダブルクリックして、文字の前後に見えないスペースが入っていないかご確認ください。
- 間違いの例:
「 完了」
(先頭にスペース)や「完了 」
(末尾にスペース) - 確認方法: F列のセルを一つ選び、キーボードの
F2
キーを押すか、セルをダブルクリックして編集状態にしてみてください。カーソルが文字のすぐ隣で点滅すればOKです。
2. 「タイムライン」という名前のシートは存在しますか?
前回もお尋ねしましたが、このスクリプトは「タイムライン」という名前のシートが存在しないと、色を変える処理を行う前に停止してしまいます。
スプレッドシートの下部にあるシートのタブ一覧に、「タイムライン」という名前のシートが間違いなく存在するか、もう一度だけご確認をお願いします。これも「シート1」と同様に、名前が完全に一致している必要があります。
3. スクリプトは正しく「保存」されていますか?
コードをスクリプトエディタに貼り付けたり修正したりした後は、必ず保存操作が必要です。意外と忘れがちな操作です。
確認手順:
- スプレッドシートのメニューから [拡張機能] > [Apps Script] を選択して、スクリプトエディタを開きます。
- エディタの上部にあるフロッピーディスクの形をしたアイコン(プロジェクトを保存)をクリックします。
もしアイコンが灰色になっていてクリックできない場合は、すでに保存されています。
タイムラインビュー導入で町工場はどう変わる?【Before→After】
この仕組みを導入することで、あなたの工場はこう変わります。
【Before】
- 現場: 「A部品のプレス加工って、もう終わったっけ?」担当の鈴木さんに電話で確認。
- 事務所: 営業担当が「B部品、いつ頃あがりそう?」と聞きに来るが、担当者がいないと正確な納期がわからない。
- 管理者: Excelの工程表が古く、実際の進捗とズレている。会議で叱責するも、更新の手間が大きく改善されない。
【After】
- 現場: 誰でもPCやスマホで最新の工程表を確認。「A部品はまだ未着手だな。先にC部品の準備を進めておこう」と、自律的に動けるように。
- 事務所: 営業担当も同じスプレッドシートを見て、「B部品の検査は完了しているな。お客様に連絡しよう」とスムーズに対応。
- 管理者: リアルタイムに進捗が色でわかるため、遅れている工程をすぐに把握し、的確なサポートができる。会議での進捗確認の時間も大幅に短縮!
たった一つのスプレッドシートが、工場全体のコミュニケーションを円滑にし、生産性を大きく向上させるきっかけになるのです。
まとめ:小さな一歩が、大きな変化を生み出す

今回は、Googleスプレッドシートのタイムラインビューと、GASを使った簡単な自動化をご紹介しました。
「DX」と聞くと難しく感じてしまうかもしれませんが、このように日々の「ちょっとした面倒」を一つずつ解決していくことが、実はDXの本質です。
今回ご紹介した方法は、ほんの一例にすぎません。
「担当者ごとに色を変えたい」
「納期が迫ったら赤くしたい」
など、あなたの工場のルールに合わせて、ぜひGeminiに相談しながらカスタマイズしてみてください。
小さな改善の積み重ねが、やがて工場全体に大きな余裕を生み出し、新しい挑戦への扉を開いてくれるはずです。さあ、あなたも今日から”Workstyle Hack”を始めてみませんか?
最後に補足
最後に補足というか注意していただきたいのが、この便利なタイムラインビューの利用条件です。
結論から言うと、残念ながらタイムラインビューはすべてのGoogleアカウントで使えるわけではありません。
~Googleヘルプ(タイムライン ビューを作成、編集する)~
2025年10月現在、タイムラインビューは主にビジネス向けや教育機関向けの一部の有料プランで提供されています。具体的には、以下のようなGoogle Workspaceのプランで利用できます。
- Business Standard
- Business Plus
- Enterprise Essentials
- Enterprise Essentials Plus
- Enterprise Standard
- Enterprise Plus
- Education Fundamentals
- Education Plus
- Education Standard
- Teaching and Learning Upgrade
一方で、個人の無料Googleアカウント(末尾が @gmail.com
のもの)や、最も基本的なビジネスプランである Business Starter では、タイムラインビューを新しく作成することはできません。
もし「挿入」メニューに「タイムライン」の項目が表示されない場合は、お使いのアカウントが対象外である可能性が高いです。
ただし、他の人が作成したタイムラインビューを閲覧・編集することは、無料アカウントでも可能な場合があります。つまり、有料プランの人が作成した工程表を、チームメンバーが無料アカウントで確認・更新する、といった使い方はできます。(ウチの会社で動作確認済み)
便利な機能なので、将来的にはすべてのプランで気軽に使えるようになると嬉しいですよね!